2019年4月23日火曜日

長崎市長選に思うBSL4計画 -国策への見返り-

BSL4施設計画=エボラウイルスなどまだ治療法がないウイルスを長崎大の坂本キャンパスに持ち込んで、猿などでの動物実験や遺伝子組み換えをする。テロへの防止も大きな目的で、これはエボラのワクチンなどを造ると同時に、バイオ兵器製造のデュアルユース(軍民併用)との指摘がある。

 長崎市長選は現職と新人3人の闘いとなり、予想通りと言ってよいと思うが現職が勝った。私は高比良氏が橋本氏に譲っておれば、橋本氏が勝っていたと思う。そのことはBSL4に関係ない-という人が多いと思うが私の意見は違う。そのことは後で説明する。

 私たちは市長選の全候補にBSL4施設計画の合意についての公開質問をして、新聞・テレビも出してくれたが、選挙の公報には誰もBSL4施設には触れず、市長選の争点にはならずに、MICEと豪華な市庁舎の建設が争点になり、これを推進する現職が勝った。

 この結果に、私は考え続けた。長崎市の財政は国と同じくかなりの借金があるのに、現職はどうして、カネがないのにMICEと豪華な市庁舎を造ると言えるのかと。そこで私は自分を納得させる結論が出たので、これから書く。

 その前に、佐世保市の例を挙げる。佐世保は、あの大騒動になったエンタープライズ事件(1968年〔昭和43年〕1月19日佐世保に入港、これで多くのけが人が出て、機動隊が全学連の学生をいじめるのを見た市民から多くの警察に対する暴挙が話題になった)があり、当時の辻一三佐世保市長は、原子力空母のエンタープライズを受け入れた見返りに、終戦で米軍に没収された名切米軍人住宅地区(今は市民運動場で、佐世保が一番盛り上がる行事、秋のYOSAKOIさせぼまつりでメーン会場となる)が返還されたと公言した。

 また原子力船むつは初航海で、放射線漏れを起こしてどこの港にも入れずにいたところが、これを辻佐世保市長が佐世保港に受け入れて、長崎新幹線が他の九州や北海道、北陸などの整備路線に遅れないで造る‐という念書を、当時の久保勘一長崎県知事が加藤紘一自民党幹事長から取った。久保知事の後の高田勇知事は「念書がなかったら長崎新幹線は着工できなかった」と述懐し、長崎新幹線が「むつ」修理の見返りであることを認めた。

 国策都市・佐世保市にはまだ見返りがある。これは1982年〔昭和57年〕佐世保港に再びエンタープライズが入港、その後、同じ原子力空母のカールビンソンも入港した。この見返りは、佐世保の外人バー近く佐世保川向かいの地区の現・佐世保公園が返還された。このほか、佐世保市は類似都市と比べ基地交付金や地方交付金が多いのについて歴代の市長は「国策に協力した」ためという。

  他県で国策に協力しなかった例を紹介しよう。山口県岩国市は米軍基地の街だ。今は沖縄を除くと最も米軍人が多い。ここで基地の爆撃機の訓練による騒音に悩む市民が多く、約20年前に反米派の市長が誕生し、米軍へ騒音防止を申し入れた。そうしたら何と、岩国市は当時、市庁舎を新築していたが、政府は建築費の交付金を打ち切るという暴挙に出た。市庁舎の工事はストップし、反米派の市長は辞任して、親米の市長が誕生して市庁舎は交付金が再開されて、市庁舎は完成した。政府はこんな露骨なことを平気でする。山口県の人口10万人程度の一都市のことは、マスコミは余り騒がない。これが東京の横田基地の近くだったら、また沖縄だったら、大問題になっただろう。マスコミとはこんないい加減なものだ。自分がマスコミにいたから分かる。

  そこで私は考えた。BSL4施設は国策だ。現職の田上氏は菅官房長官から直接、BSL4の長崎大への設置を「国策」として要請された。これを断ったら地方交付金が大幅カットされて、何も事業ができないが、これを受け入れると、交渉で大幅な見返りが得られる-田上市長はこう考えたと。だから今回の市長選で、市民が納得できる財政的な裏付けを示さずに、MICEと豪華な市庁舎を公約として挙げたと私は思う。これまでの40年以上の記者経験から外れていないはずだ。私の勘だけだが、これはBSL4施設に対する見返りを期待して公約として挙げたのだと思う。

  MICEの大型国際会議場などの催しは交通の便の良い福岡でストップし、ほとんど長崎には来ないと誰もが指摘する。田上市長は支援する同郷の谷川弥一衆院議員が実質経営する建設会社に工事を回せばよく、MICEの運営は次の市長に任せるだろう。長崎新幹線も複線の見通しが全く立たずに、現在の武雄温泉駅で乗り換えてまで新幹線に乗る人は少ないだろう。新幹線が一応、開通したら在来線の特急がなくなるのがこれまでの常。JRに対する風当たりが強くなり、だから在来線の特急を全部はなくさずに大幅減でも対応してもほとんどが、高速バスに乗り換えると長崎市民の多くが予想している。そうしたらJRだけでなく、新幹線を推進する長崎県、長崎市も窮地に落ちる。私はこの時、国は「エボラ菌輸入」案を出して、長崎県のために新幹線建設費用の佐賀県負担分は、そのほとんどを国が背負う-ということになるのではないか?この筋書きは、私よりかなり頭のよい官僚は考えているはずだ。ちなみに愛媛県の加計学園の獣医学部にもBSL4施設ができると専門家は言う。ここも何らかの見返りがきっとある。

  本題に移る。もしも現職が落選すれば、見返りのMICEと豪華な市庁舎にあんなに反対していたのを、賛成とは言えないだろう。そうしたら市政は混乱する。この混乱に合わせて、BSL4施設建設の「住民の合意と理解の必要性を訴えれば、公開質問状との答えとは異なり「住民の納得を前提」となるのではと、かなりの確率で新市長は納得すると思ったのだが,時は遅い。

  最後に私たちは、BSL4施設建設には「住民の合意と理解」が必要なこと、その上に工事が進んでおり、もし完成した場合の「稼働停止」裁判闘争と、BSL4施設計画で受けたこれまでのストレスや今後の心配事などに対する裁判闘争-私は以上2つの裁判をすることを提案する。もちろんこれまでの情報開示請求訴訟と、現在進行中の仮処分裁判支援も大切なことは言うまでもない。


 (池田文夫・差し止めを求める会運営委員、元長崎新聞記者、自称フリーランスのジャーナリスト)

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