2018年12月27日木曜日

住宅密集地に造るな ! BSL4施設計画で周辺住民が訴訟

 長崎大学が住宅密集地の坂本キャンパスに計画しているBSL4施設建設に反対している周辺住民らでつくる「BSL4施設計画の差し止めを求める会、山田一俊代表ら約2000人」と個人原告4人が同大学と施設建設に同意した長崎県、長崎市の3者に対し、ここで扱うウイルスなどの情報開示などを求めた裁判の第1回口頭弁論が25日、長崎地裁(土屋毅裁判長)であり、被告側の長崎大学などはいずれも請求の棄却を求め争う姿勢を示した。
 次回は来年2月18日午前10時半から。



 訴状によると、ウイルスは常に漏れる危険があり、住宅地に造るにも関わらずにも住民が情報の開示を求めても不都合なことを明らかにしていない。情報を開示しないのは権利侵害の始まりであり、知事、市長も住民の健康を守る義務があるのに自覚がない。これらは幸福追求権、人格権、知る権利の侵害であるとしている。
 これに対し長崎大学は、答弁書で、求める会が権利なき社団としての原告適格は認められない。また大学はBSL4を稼働させても事故が発生しないよう万全の対策を取り、また万一事故が発生しても被害を最小限に止める対策を講じるなどとして棄却を求めた。
 この後、求める会の山田代表が求める会を代表して、また個人原告3人も「坂本を含む浦上地区は、過去キリシタン弾圧や原爆が投下された場所で、しかも住宅密集地。研究者にとっては都合の良い場所であっても、住民にとっては日本で最も造ってはいけない場所。ヒューマンエラーはどんな対策を取ってもなくならないし、事故は必ず起きる。ウイルスなどを公開しないことはバイオ兵器を造っても住民は分らない。全ての情報を開示すべき」などと力強く述べた。
 また県、市ともに棄却を求めた。

 傍聴席は満席になり、マスコミも新聞テレビ全社が取材し、関心の高さを示した。

 《裁判の主な意見交換は以下の通り》
1 長崎大学は、以下のとおり原告らに対して説明を求めた。
 ① 求める会が社団として成立しているのか。
 ② 求める会が原告として権利を主張できる立場にあるのか。
 ③ 原告らが主張する権利は何か。また、主張する権利の法的な根拠は何か。
 これに対し原告側代理人は、後日、書面で明らかにすると回答。
2 長崎大学と同趣旨の要求が裁判長からもなされた。これに対し原告代理人は、裁判所から書面で請求して欲しい旨要求したが、裁判長は長崎大学から要求されている事項であることから書面は出さないとした。これに対し原告代理人は、検討する旨を回答。
3 原告側は、求める会の代表、個人原告4人のうち3人、原告代理人による口頭意見陳述を行った。その他に、求める会の会員1人による陳述を予定していたが、裁判長は、「会としての意見であれば代表が陳述して欲しい」旨要求したうえで、代表による代読ではどうかと提案。これに対し、原告側は、あくまでも会員本人による音読を要求したが、会員本人による陳述は認められなかった。


《一方、裁判の事前集会と事後集会が開かれた。》


 事前集会では、まず山田代表が「住宅密集地の坂本キャンパスには絶対造らせない」と決意を述べ、4人の原告もそれぞれが、裁判に臨むにあたっての決意を述べて「絶対に裁判に勝とう」などと述べた。


 この後の事後集会で、住民から「いつも住民の立場で書く長崎新聞の論説が今日(25日)のBSL4関連では大学よりで残念だった」「長崎大学の熱帯医学研究所以外の教職員の中でBSL4に対して住宅密集地に造るのに疑問を持っている人も多い」「ヒューマンエラーは必ずある。危険率100%だ」「建設着工を差し止めるためには、県と市を動かすべきではないか」などの意見が相次いだ。

 一方、龍田紘一郎主任弁護士は「傍聴席は満杯になったが、皆さんおとなしい。拍手などして裁判官にプレッシャーをかけよう。またわが身かわいさのために政府寄りの判決を出すのが多くなってきており、今後の裁判で裁判官の心に響くようなことを言って、保身のための判決を出さないようにさせよう」と語った。


【解説】
 長崎大学のBSL4建設計画周辺住民はついに裁判に持ち込んだ。学術会議の提言にある合意と理解もなく、WHOの住宅地は避けるような指針に反しているとして建設中止を求めた。だが、単に建設中止を求める訴訟をするには億単位の資金が必要で、龍田紘一郎弁護士は「貧乏人は裁判も出来ない」事態になっており、仕方なく側面から情報の開示請求となった。
 このBSL4施設で大学側が造った地域連絡協議会では、169の考えられるリスク〔調漸学長特別補佐〕の説明が終わったばかりで、突然、着工声明となった。この協議会でもまだ論議が尽くされたとは言い難いが、大学側は「国策」としてのBSL4施設の建設予算がついており、また来年度予算案もついて、大学側にとっては論議不十分といえども、着工せざるを得ない事情が見え隠れする。
 建設反対側が最も強調するのは、東京・武蔵村山市の例だ。国立感染研究所は、住民の同意を得ずに造ったために、35年間も稼働ができず、現在も本格稼働とは言えず、万一疑わしい病人が出た場合の検査だけだ。つい最近、厚労省は本格稼働をするために、エボラウイルスの輸入を申し入れたが住民は拒否。この武蔵村山の二の舞をしないために学術会議は住民の合意と理解の提言を出した。
 だが大学はこれを無視したといえ、再び、完成したとしてもエボラウイルスなど最も危険なウイルスを使っての動物実験や遺伝子検査をするには、周辺住民の合意が絶対条件だ。
 BSL4施設は2021年度には完成するが、この裁判が終わって、大学側が勝ち、その上、周辺住民の合意をどうとるのか、全く先が見通せないのが現状。
 強行着工で中立側の住民の硬化も予想され、再び、施設は出来ても稼働は出来ないと言う、武蔵村山と全く同じ状態になることが予想される。強行着工は国立大学としての立ち位置が問われそうだ。(池田文夫)


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