2018年11月27日火曜日

記者会見の概要報告(公開質問の意味の説明を兼ねて)

 BSL4施設設置の中止を求める自治会・市民連絡会(山田一俊会長・中止連)は,11月26日,長崎市の市政記者クラブで記者会見を行いました。課題は「長崎大学への公開質問(再質問)」です。


 記者会見には山田会長ら5人が参加しました。16日の『BSL4施設計画の差し止めを求める会』提訴から10日たちましたが、予想を上回る多くのマスコミから取材をしていただきました。大変ありがたく,感謝いたします。

 記者会見は決行してよかったと思います。記者たちから質問が相次ぎ、大学設置の地域連絡協議会での大学側の言動のひどさに注目してもらえました。それだけでも良しとすべきだと自己評価しています。
 取材後の報道も,テレビと新聞でそれぞれやっていただきました。これについては後日,まとめたいと思います。
以下,公開質問を行った趣旨と意味について書き残しておきます。

【経緯1】公開質問に至るまで(概要と趣旨)
今回の公開質問(再質問)の発端は,11月14日開催の第21回地域連絡協議会に遡ります。その席上で,河野学長と調副学長が重大な発言をなさり,かつ重大な認識を示されたのです。それは次の2点にまとめることができます。

 (1)着工するかどうかは長崎大学自身が判断して決定できるという認識の下に,12月21日の着工を公式に表明したこと。
 (2)日本学術会議が,BSL4施設建設にあたっては住民の理解と合意を得るよう求めている提言に関し,『住民の理解と合意を前提としなければ造るな,とは書かれていない』との認識を示したこと。

 中止連は,これらの発言・認識は重大問題だとして次のような抗議声明を発表し,同時にそういう認識が正しいとする根拠を示すよう,公開質問で問い質しました。


抗議声明1:上記(1)の表明は多くの住民の強い反対があることを承知の上でなされたものであり,国民の税金で賄われる国立大学の立場をわきまえない暴挙である。計画中止につなげるための情報公開を求める訴訟も同時に起こされており,生命を脅かすリスクを忌避したい住民と裁判で争う国立大学など,前代未聞,言語道断である。

抗議声明2:上記(2)の発言は,「住民の合意と理解」を求める日本学術会議の提言を知りながらなされたものであり,国立大学の立場でありながらアカデミックの最高機関の指導を蔑ろにする信じがたい所業である。

公開質問1:長崎大学の判断のみで,リスクを忌避したい住民の意思を無視して着工を決定できるとする根拠は何か。

公開質問2:アカデミックの最高機関の指導である日本学術会議の提言を,長崎大学がないがしろにしてよい根拠は何か。

【経緯2】長崎大学の回答
 上記,公開質問に対し,長崎大学はこちらが要望した期限内に答えてくれました。しかしながら,その内容は質問には直接答えない,はぐらかし論法そのものでした。言い換えると,住民を舐め切った回答ということです。これは現在の長崎大学の体質そのものを表していると考えられます。
その回答とは下記です。

 『貴会からのこれまでの御質問に対して回答しておりますように、BSL-4施設設置計画については、本学が設置主体として検討を進めてきております。本学としては、本計画を進めるにあたり、地域との信頼関係の構築が重要であるという認識の下、ご指摘の日本学術会議の提言を尊重しながら、地域住民の皆さまに本計画の御理解を頂くための取組を行っておりますし、今後とも継続的に行ってまいります。    以上』

 まず公開質問1に対する回答部分を抜き出すと次のようになると思われます。


質問1:長崎大学の判断のみで着工を決定できる根拠は何か?
              ↓
回答1:本学が設置主体として検討を進めてきております。

また公開質問2に対する回答に相当する部分は次のようになると思われます。

質問2:日本学術会議の提言を長崎大学が蔑ろにしてよい根拠は何か?
              ↓
回答2:日本学術会議の提言を尊重しながら、地域住民の皆さまに本計画の御理解を頂くための取組を行っておりますし、今後とも継続的に行ってまいります。

 まとめると,回答1は回答になっていません。つまり,設置主体者はなぜ設置主体者の判断のみで着工を決定できるのか,というように,「長崎大学」が「設置主体」に置き換わって質問は続きます。
 また,回答2は嘘とごまかしが含まれています。「ご理解を頂くための取組」が仮に行われているとしても,そこには「合意を得るための取組」については何も含まれていません。つまり,『日本学術会議の提言を尊重しながら』と書きながら,提言の「合意」の部分については完全に無視しているわけです。従って,直接の回答となる『蔑ろにはしていません』とは書けなかったのでしょう。

 以上のように,回答は私たち住民の期待とは程遠い回答でした。従って,再質問をせざるを得なかったのですが,ご理解いただけると思います。
 再質問は以下の通りです。

【再質問】

 再質問1:貴学が設置主体者であることは承知しているが,その設置主体者の判断のみで建設着工を決定できる根拠は何かと質問している。改めて答えてもらいたい。
 再質問2:日本学術会議の提言には『住民の合意と理解を前提としなければ造るな,とは書かれていない』と明言されたが,提言は『住民の合意をBSL4施設建設の要件の一つ』と位置付けている。従って,貴学の認識は間違っていると思われるので,明確で丁寧な説明をしてもらいたい。(注:日本学術会議の当該部分も明記)

 今回記者会見した再質問とは,以上のような流れの末にたどり着いたものです。

 最後に,再質問状に付記した,日本学術会議の内容をここにも書き出しておきます。住民の合意と理解は事前に得ておくことが建設の要件であるという趣旨が明記されていることに注目してください。

日本学術会議の提言

【第4章の標題】:BSL-4 施設建設の要件
【第4章の中身】:(1) 施設ならびに運営の要件
         (2) 地域住民の合意
         (3) 国の関与

 「要件」とは,辞書によれば「欠くことのできない前提条件」のことですから,日本学術会議の提言は,地域住民の合意はBSL4施設建設の要件の一つと位置付けていること,言い換えると,住民の合意が建設の事前に必要なことがわかります。

 長崎大学の『住民の合意を前提としなければ造るな,とは書いていない』という認識は,私たちにはどう見ても間違っているとしか思えないのですが,長崎大学は違うのでしょうか?最高学府の知性が問われないでしょうか?
 『要件』という言葉の意味以外でも,住民の合意は『事前に必要』ということがわかります。一つは,本文からです。本文9ページには,建設後,何十年も稼働できなかった痛切な反省が縷々述べられています。これはその過ちを二度と繰り返すな,事前に合意を得ておけ,という意味にほかなりません。もう一つは他の要件も事前の条件であることが明らかだからです。例えば,住民の合意と並んで3番目の要件として『国の関与』というものが並んでいますが,ここには安全を十分に担保できる十分な国の予算が必要と書かれています。
 そのような経費の当てがなくて建設できるはずがありません。それと全く同じく,『住民の合意』は,それがなくては建設できるはずがない,というように位置づけされているのです。

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